ウスターソースとは?特徴・歴史・種類から使い方まで

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ウスターソースは日本の食卓に欠かせない調味料の一つですが、その歴史や特徴、他のソースとの違いをきちんと理解している方は意外と少ないかもしれません。この記事では、ウスターソースとは何かから基本情報、使い方まで徹底的に解説します。この記事を読めば、あなたもウスターソースの魅力を存分に活かした料理が楽しめるようになりますよ。

ウスターソースとは

ウスターソースとは、野菜や果物に香辛料を加えて熟成させた液体調味料です。 日本農林規格(JAS)では「野菜若しくは果実の搾汁、煮出汁、ピューレー又はこれらを濃縮したものに砂糖類、食酢、食塩及び香辛料を加えて調製したもの」と定義されています。

ウスターソース類は粘度によって3種類(ウスターソース・中濃ソース・濃厚ソース)に分類され、ウスターソースは粘度が0.2Pa・s未満のものを指します。野菜や果実の繊維質が少ないため、サラサラとした液体で、香辛料独特の辛味があるのが特徴です。

日本では「ソース」と言えばウスターソース類を指すことが多く、特に西日本ではウスターソースが広く親しまれています。

ウスターソースの歴史

ウスターソースは19世紀初頭にイギリスのウスターシャー州ウスターで誕生しました。その名前は発祥地の地名に由来しています。

最も有名な起源説によると、ウスター市に住む主婦が余った野菜や果物を有効活用するため、香辛料をふりかけて壺に入れ、腐敗しないように塩や酢を加えて保存していました。それが時間をかけて熟成され、見たことのない液体になったのです。この偶然の産物が評判を呼び、「ウスターソース」として販売されるようになりました。

また別の説では、19世紀にウスター州の貴族がインドから持ち帰ったソースのレシピを、リーとペリンズという薬剤師に依頼して製造し、それが「リー&ペリンズ社」のウスターソースとして世界中に広まったとも言われています。

日本へは江戸時代末期に伝わり、明治以降に洋食の普及とともに全国に広まりました。当初は「新味醤油」や「洋式醤油」と呼ばれ、その後、日本人の口に合うように独自の発展を遂げました。

ウスターソースの特徴と成分

主な原材料

ウスターソースの主な原材料は以下の通りです:

  • 野菜(トマト、タマネギ、ニンジン、セロリなど)
  • 果実(リンゴ、プルーン、デーツ、ミカンなど)
  • 砂糖や糖みつ
  • 食酢
  • 食塩
  • 香辛料(クローブ、シナモン、ローリエなど)

特徴

ウスターソースの主な特徴は:

  • さらさらとした液体状 – 粘度が0.2Pa・s未満と定義される
  • 酸味と辛味のバランス – 香辛料の風味と食酢の酸味が特徴
  • コクと風味の豊かさ – 野菜や果実の旨味が凝縮されている
  • 多目的な用途 – 料理の味付けから、隠し味、かけるソースまで幅広く使える

ウスターソースと他のソースの違い

中濃ソースとの違い

中濃ソースはJAS規格において粘度が0.2Pa・s以上2.0Pa・s未満と定義されています。ウスターソースより野菜や果実の繊維質が多く含まれるため、とろみがあります。味わいはウスターソースの辛味と濃厚ソースの甘味を両方持ち合わせた、バランスの良いソースです。関東地方以北で好まれる傾向があります。

とんかつソース(濃厚ソース)との違い

とんかつソースはJAS規格では「濃厚ソース」に分類され、粘度が2.0Pa・s以上のものを指します。果実を多く使用しており、繊維質も多く含まれ、とろりとした甘くソフトな風味が特徴です。酸味と辛味が控えめで、子どもにも食べやすく、とんかつやお好み焼きなどに最適です。

オイスターソースとの違い

オイスターソースは名前にソースとつきますが、ウスターソース類とは全く異なる調味料です。塩漬けにした牡蠣を発酵させて上澄み液を濃縮させたもので、牡蠣の旨味とコクが特徴的です。中華料理によく使われ、青椒肉絲や焼きそば、チャーハンなどに向いています。

違いの一覧表

ソースの種類 粘度 主な特徴 おすすめの使い方
ウスターソース 0.2Pa・s未満 さらさらとした口当たり、酸味と辛味が強い 揚げ物のつけダレ、炒め物の味付け、料理の隠し味
中濃ソース 0.2Pa・s以上2.0Pa・s未満 適度なとろみ、辛味と甘味のバランスが良い 揚げ物全般、ハンバーグソース、万能調味料として
濃厚ソース(とんかつソース) 2.0Pa・s以上 とろりとした粘度、甘味が強くソフトな味わい とんかつ、お好み焼き、ハンバーグなど
オイスターソース 牡蠣の風味とコク、塩味と甘味がある 中華料理全般、炒め物、煮込み料理に加える

ウスターソースの健康効果

ウスターソースは様々な健康効果を持つ調味料です:

  • 低カロリー – 大さじ1杯約18キロカロリーと、同量のフレンチドレッシングの約3分の1、マヨネーズの約6分の1のカロリーです。
  • 栄養素が豊富 – 野菜や果実に含まれるビタミンやミネラルが含まれています。特にトマトのリコピンやニンジンのベータカロテンは、抗酸化作用があるとされています。
  • スパイスの健康効果 – 香辛料には食欲増進や消化促進、抗菌作用などの効果があります。
  • 塩分控えめ – 大さじ1杯の塩分は約1グラムで、薄口しょうゆの約半分、減塩しょうゆとほぼ同等です。
  • ノンオイル – 油脂分を含まないため、脂質を気にする方にも安心です。
  • 食酢の効果 – 含まれる食酢には、疲労回復効果やカルシウムなどのミネラル吸収を促進する効果があります。

ウスターソースの使い方

ウスターソースはその特徴から、様々な料理に活用できます:

かけて使う

  • 揚げ物 – とんかつやコロッケなどにさっぱりとした味わいを加えます
  • 焼きそば・焼きうどん – 酸味と辛味がめんと絡みます
  • 千切りキャベツ – シンプルながら野菜の旨味を引き立てます

調理に使う

  • 炒め物の味付け – 肉や野菜の炒め物に深みを与えます
  • 煮込み料理の隠し味 – ハヤシライスやカレーに少量加えるとコクが増します
  • ミートソース – トマトベースの料理と相性抜群です
  • チャーハン – 風味付けに最適です

アレンジ調味料として

  • ケチャップと混ぜる – オムライスソースに
  • マヨネーズと混ぜる – コクのあるドレッシングに
  • 味噌と混ぜる – 和風の肉料理の味付けに

各地域のソース(地ソース)を楽しもう

日本各地には地元で愛される「地ソース」があります。その土地の食文化に根ざした個性的なソースを楽しんでみませんか?

関西地方の地ソース

  • イカリソース(兵庫県西宮市) – 1906年創業の老舗。醸造酢とトマトを使った関西風のソースで、すっきりとした酸味と香辛料の風味が特徴。
  • 阪神ソース(兵庫県神戸市) – 日本最古のソースメーカーと言われ、1885年創業。「日ノ出ソース」ブランドで親しまれている。
  • オタフクソース(広島県広島市) – 1922年創業。お好み焼きソースで有名だが、ウスターソースも製造。広島風お好み焼きと共に発展。

関東地方の地ソース

  • ブルドックソース(東京都中央区) – 1905年創業。「犬首印ソース」から始まり、日本で初めて中濃ソースを販売した会社としても知られる。
  • 江戸チドリソース(東京都足立区) – 東京の下町で愛される佐野食品工業所のソース。地域に根付いた伝統の味わい。
  • ヤハタソース(東京都江東区) – 八幡屋商店が手掛ける、昔ながらの製法を守るソース。深いコクが特徴。
  • トキワソース(東京都北区) – 創業100年を超える老舗ソースメーカー。「トキワソース」の名で親しまれ、東京の食文化を支えてきた。

中部地方の地ソース

  • カゴメソース(愛知県名古屋市) – トマトケチャップで有名なカゴメは、1899年に名古屋で創業。名古屋発祥のメーカーとしてソースも製造している。
  • コーミソース(愛知県名古屋市) – 名古屋で人気の「こいくちソース」を製造。濃いめの味付けが特徴。
  • 山二造酢・七宝タカラソース(三重県津市) – 愛知県七宝町のタカラ食品工業が製造していたソースのレシピを継承。
  • トリイソース(静岡県浜松市) – 静岡県浜松市に拠点を置くソースメーカー。浜松を中心に親しまれている。

九州地方の地ソース

  • 金蝶ソース(チョーコー醤油/長崎県長崎市) – 醤油で有名なチョーコー醤油が製造するソース。長崎の地元の味として愛されている。
  • コックソース(コック食品/福岡県福岡市) – 福岡県内で親しまれる地元メーカー。酸味が強めの特徴を持つ。
  • 星ソース(ニビシ醤油/福岡県古賀市) – 九州の醤油メーカー・ニビシが製造する「ニビシ 星ソース」。福岡を中心に親しまれている。

地ソースは地元のスーパーで見つけられることが多いですが、最近ではインターネット通販でも購入可能です。その土地ならではの味わいを楽しんでみてください。

ウスターソースの保存方法

ウスターソースを美味しく保存するためのポイントをご紹介します:

  • 開封前 – 直射日光を避け、常温で保存します。
  • 開封後 – 冷蔵庫で保管すると、味や風味を長持ちさせることができます。
  • 保存期間 – 開封後の目安は約60日。中濃ソースや濃厚ソースは約30日が目安です。
  • 容器の扱い – ウスターソースは香辛料や野菜の繊維などが底に沈殿することがあるため、使用前によく振ってから使いましょう。
  • 注ぎ口のお手入れ – 使用後は注ぎ口をきれいに拭き、固まらないようにしましょう。

ウスターソースの代用品

ウスターソースがない場合は、以下のもので代用できます:

  • 中濃ソース+醤油 – 中濃ソースに少量のしょうゆを加えると、ウスターソースに近い風味になります。目安は中濃ソース大さじ1に対してしょうゆ小さじ1程度。
  • とんかつソース+酢+醤油 – とんかつソースにお酢としょうゆを加えると、とろみが緩み酸味が加わります。目安はとんかつソース:お酢:しょうゆ=7:2:1の割合。
  • ケチャップ+醤油+スパイス – ケチャップにしょうゆやこしょうなどのスパイスを加えると、簡易的なウスターソースになります。目安はケチャップ:しょうゆ:スパイス=7:2:1。
  • 醤油+りんごジュース – しょうゆとりんごジュースを煮詰め、酢と塩こしょうを加えると、ウスターソース風の調味料になります。

手作りウスターソースのレシピ

自家製ウスターソースを作ってみましょう。市販品とは一味違う風味を楽しめます。

材料

  • しょうゆ:100ml
  • りんごジュース:150ml
  • 野菜ジュース:150ml
  • 砂糖:大さじ1
  • 酢:大さじ1
  • 塩:小さじ1/2
  • 黒こしょう:少々

あれば追加したい香辛料

  • クローブ:2~3個
  • ローリエ:1枚
  • オールスパイス:少々

作り方

  1. すべての材料を鍋に入れて混ぜる
  2. 中火で沸騰させたあと、弱火で約15分煮詰める
  3. 粗熱が取れたら容器に移して冷蔵庫で保存する

ポイント

  • 野菜ジュースの量を増やすと中濃ソースやとんかつソースの風味に近づきます
  • お好みの香辛料を加えれば、オリジナルの風味が楽しめます
  • しっかり煮詰めるほど濃厚な味わいになります

まとめ:ウスターソースを知って料理の幅を広げよう

ウスターソースは、イギリス発祥の調味料でありながら、日本の食文化に深く根付き発展してきました。さらさらとした液体状で、酸味と香辛料の辛味が特徴的な調味料です。

その用途は揚げ物にかけるだけでなく、炒め物の味付けや煮込み料理の隠し味など多岐にわたります。また、低カロリー・ノンオイルで健康面でも優れた特徴を持っています。

中濃ソースやとんかつソース、オイスターソースなど似た名前の調味料との違いを理解し、料理に合わせて使い分けることで、より一層料理の幅が広がります。

さらに日本各地の「地ソース」を探して味わってみるのも、食の旅を楽しむ一つの方法です。ウスターソースの奥深い魅力を知り、毎日の料理に取り入れてみてください。

11月7日は「ソースの日」です。これは日本ソース工業会が設立された日であり、ウスターソースのエネルギー量が100グラム当たり117キロカロリーであることにちなんでいます。ぜひこの機会に、ウスターソースを使った新しいレシピにチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

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